2021年11月の記事一覧
災害科学科2年生が栗駒・気仙沼巡検に行ってきました(10月27日~29日)
災害科学科2年生がSSHスキルアップ研修Ⅱ「栗駒・気仙沼巡検」として,岩手宮城内陸地震の被災地である栗原市・一関市に加え,気仙沼市・南三陸町で東日本大震災に対する理解を深めました。
<1日目>
東北大学の高嶋礼詩教授を講師に迎え,岩手宮城内陸地震を扱いました。栗原市ジオパークビジターセンターを訪問後,ジオガイドさんの案内によって荒砥沢ダムや崩落地を訪問し,発生から13年を経た岩手宮城内陸地震を学びました。午後に訪れた祭畤震災遺構では,地震によって大きく破壊された橋を目の当たりにし,地すべり災害がどのような背景によって引き起こされたのか,現地で高嶋先生から解説いただいた後,夜は仙台近辺の歴史を振り返り,どのような過程を経て岩手宮城内陸地震に至ったのか,そして過去のカルデラ噴火による火砕流堆積物が広範囲で滑ったことに起因することを学びました。
<2日目>
気仙沼市に移動し,気仙沼市復興祈念公園から内湾地区の位置関係を把握した後,リアス・アーク美術館に移動。館内見学後,山内宏泰館長との意見交換会を行いました。自身が抱いた疑問・考えをアウトプットし,館長との議論は予定の時間を超えるほどでした。昼食後,内湾地区を散策。この土地の文化や産業に触れる時間としました。
午後は気仙沼市東日本大震災津波伝承館へ移動し,芳賀一郎先生からの講話の後,気仙沼向洋高等学校KSC「向洋語り部クラブ」の皆さんに館内を語り部として案内していただきました。本校も「まち歩き」を実施していますが,震災を語り継ぐ活動に取り組む同年代がここにもいることに,背中を押された様子でした。
夕食後は気仙沼市まち・ひと・しごと交流プラザ(pier7)を会場に,気仙沼市大浦地区での防災活動に取り組む吉田千春さんを講師に招き,災害時の人権がいかに大切かを考える場を持ちました。少子高齢化が進む地域で実践してきた防災活動とは,どのような配慮があって可能になっていったのか,吉田さんの取り組みを知るとともに,車座となって議論し互いの考えを共有する活動を通して,今後高齢化が進む地域で防災減災を考えるにはどのような視点が必要かを学びました。
<3日目>
朝食前に希望者を対象として,魚市場見学を行いました。早朝にもかかわらず14人の生徒が参加し,講師の阿部正人先生の案内のもと,早朝から鰹の水揚げの様子を見学しました。水産業の片鱗を垣間見るとともに,この地域がいかに漁業とともに栄えてきたかを肌で感じることができました。
朝食後は大谷海岸・小泉海岸2つの防潮堤に実際に立ち,地域住民との合意形成の末に砂浜を残すことに成功した大谷海岸防潮堤,後背地がそのままとなっている小泉海岸防潮堤の様子を対比し,復興とはその地域に人が住まうことが前提であり,その議論にいかに地域住民が参画できるかの重要性を考えました。
午後は南三陸町語り部であるホテル観洋・伊藤 俊さんの案内により,南三陸町震災遺構高野会館,南三陸町防災庁舎跡を巡りました。特に高野会館は実際に内部へ入って細部も見学し,現在ではなかなか見ることが難しい「全く手の加えられていない10年前そのままの遺構」に圧倒されるばかりでした。
午後はホテル観洋での昼食後,ホテル内ホールで振り返りのワークショップを展開しました。阿部先生のファシリテーションのもと,これまでの行程を振り返り「これからどんな課題意識を持って取り組んでいくかを考える」をテーマに,ペアトーク・OST(オープンスペーステクノロジー・一人ずつ30秒プレゼンを通して,自らの学びの振り返りと今後への決意を共有しました。
2泊3日という長丁場でしたが,二つの災害を科学的・社会科学的に捉え,災害そのものへの視点は単一なものではないことを改めて学ぶ場となりました。今後の災害科学科諸君の飛躍に今回の巡検が強き足がかりとなって,防災・減災・伝災を学んだ者として未来を担う有為な人材になってほしいと願っています。
<荒砥沢ダム上方・冠頭部でジオガイドさんから学ぶ(10/27栗原市)>
<東北大学・高嶋先生の講話(10/27一関市文化センター)>
<「東日本大震災の記憶と津波の災害史」見学(10/28気仙沼市リアス・アーク美術館)>
<気仙沼向洋高等学校語り部クラブの皆さんとともに(10/28気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館)>
<吉田千春さんによる講話・ワークショップ(10/28気仙沼市ひと・まち・しごと交流プラザ)>
<海水浴場で名高い大谷海岸・大谷海岸防潮堤を行く(10/29大谷海岸防潮堤)>
<小泉海岸防潮堤に立ち,阿部先生とともにその規模をこの目で確かめ,考える(10/29小泉海岸防潮堤)>
<一切手が加えられていない,高野会館内部で伊藤 俊さんの説明。あの日ここは何が起こったのかを聞き,考える(10/29南三陸町震災遺構・高野会館)>
<南三陸町防災対策庁舎跡を背後に(10/29南三陸町震災復興祈念公園)>
<振り返りのワークショップ(10/29南三陸ホテル観洋)>
<今回の巡検を通して今後自分が取り組みたいことを共有する(10/29南三陸ホテル観洋)>
<参加生徒の振り返りレポート>
アースサイエンスウィークin仙台・高校生発表
1 目 的
アメリカ地球科学研究機関AGI(American Geosciences Institute)は,市民が地球科学や自然科学の理解を深め,惑星の進化を学び,地球環境史を認識するために,国内外のイベント「Earth Science Week」を開始。2013年頃から日本地球惑星科学連合(JpGU)宛に協力についての打診があり,検討期間を経て2018年から開催している。
本年度,日本におけるメインイベント会場で行われる高校生発表に参加することで,日頃取り組んできた研究の成果を発表し,参加者との対話を通じて相互交流を行うことで,発信力やコミュニケーション力の向上と,探究心の一層の伸長を図る。
2 主 催 アースサイエンスウィークジャパン実装委員会
3 日 程 2021年10月30日(土) 10:00~17:00
31日(日) 10:00~17:00
4 会 場 スリーエム仙台市科学館
5 ポスター発表題・参加者
「都市型津波と対策について」〈災害科学科〉2年4名
「関東大震災とイチョウの防火性について」〈災害科学科〉2年4名
「蔵王火山シミュレーション」〈災害科学科〉2年6名
「私たちに何が出来るだろうか ~率先避難者たれ~」〈災害科学科〉2年5名
6 実施内容・評価
災害科学科2年生19名が参加した。これまで課題研究で取り組んできたその成果を発表する貴重な機会を得ると同時に,地学分野の研究者や他校生と交流し,研究内容における新たな課題を発見したり,興味を引くポスター作成のヒントを得たりすることができた。
7 感 想
■災害科学科2年 佐々木拓夢(田子中出身)
初めてのポスター発表であり,慣れない中での発表でしたが,回数をこなしていく度に段々慣れてきて,その発表の中で改善点も見つかるなど,とても良い経験になりました。また,質疑応答の際に自分たちが予想もしないような質問だったり,アドバイスをいただいたりしたことで,次の発表の機会にはもっと良い発表ができるような気がします。今後は研究内容を更に発展させていきたいです。
■災害科学科2年 淡谷倖(田子中出身)
今回の研究発表を通して,自分たちの研究はもっと良くしていけると思いました。なぜならば,私は4回くらいポスター発表を行ったのですが,全ての発表で全く違う質問やアドバイスをいただき,その質問にしっかりと答えることができませんでした。この経験を今後の研究につなげ,研究を深めてきちんとした発表ができるようにしたいです。