自然災害共同研究「釧路湿原巡検」
1 目 的
「釧路湿原巡検」は,北海道釧路湖陵高等学校がSSH地域巡検として位置付けているものであり,北海道を代表する自然環境のもとで環境保全を目的とした環境調査の手法を学び,環境科学における科学的な探究手法を身に付けることを目的とする。また,本校独自に温根内ビジターセンターや猛禽類医学研究所,釧路市動物園を訪問することで,シマフクロウをはじめとした北海道固有の動物について,その形態的特徴や寒冷地における環境適応などを学び,課題研究や理科学習における自然環境の保全に関連した展開の一助とする。
2 主 催 北海道釧路湖陵高等学校
3 行 程
2021年7月1日(木) 移動日
2021年7月2日(金) 達古武湖森林再生事業地(昆虫班,沢班),細岡展望台
2021年7月3日(土) 温根内ビジターセンター,猛禽類医学研究所,釧路市動物園
4 参加生徒 災害科学科2年2名,普通科2年1名
5 講 師 等 北海道釧路湖陵高等学校 教諭 玉森 一 氏 ほか
(株)さっぽろ自然調査館 代表取締役 渡辺 修 氏 ほか
温根内ビジターセンター 指導員 藤原 伸也 氏
猛禽類医学研究所 獣医師 小笠原 浩平 氏,獣医師 安達 光 氏
6 実施内容・評価
(1)達古武湖森林再生事業地におけるフィールドワーク(昆虫班,沢班)
湿原に棲息する生物の採捕とスケールの測定,種類の同定など,湿原環境の保全を目的とした科学的な調査方法を学んだ。さらには,生まれ育った自然環境を科学的に理解し,後世に残すことを目的とした環境教育の機会を与えるものとしており,自然との共存について考える機会を得た。
(2)恩根内ビジターセンターにおけるフィールドワーク
環境省釧路湿原野生生物保護センター・猛禽類医学研究所における研修
釧路市動物園における研修
温根内木道では,ハンノキ林を抜けてヨシ・スゲ湿原に至る行程において,湿原における植生とそこに生息する動物を観察した。また,猛禽類医学研究所では,レッドデータにおいて絶滅危惧Ⅱ類に指定されるオオワシやオジロワシ,絶滅危惧ⅠA類のシマフクロウといった希少種の生息状況や保護活動の具体について学んだ。
人間生活と自然との共存について,その難しさを生徒たちは直に感じ取ることができた。
7 生徒感想
▉災害科学科2年 三浦 誠鈴(館中出身)
私たちは7/1からの3日間,北海道釧路市に行ってきました。1日目は学校から釧路への移動で終え,2日目から本格的な実習が始まりました。達古武での昆虫調査では,自然林,人工林,草地それぞれの場所に生息する虫の種類や数,さらには生息する木の種類を調査しました。宮城県には無い湿原を中心とした自然に触れることで,北海道の広大さや自然の豊かさを直に感じることができました。3日目の温根内ビジターセンターと猛禽類医学研究所での実習は,私たちが楽しみにしていた研修の1つです。釧路湿原に生息する珍しい生物,湿原の自然再生事業,そして事故による猛禽類の怪我の状況や事故を未然に防ぐための対策,シマフクロウを絶滅させないための取り組みなど,実際にお話を聞くことで多くのことを学びました。私は今回の巡検を通して,自然の良さや大切さを直に感じ,文明が発達した世の中でこれからどのようにこの自然環境を受け継いでいくか,改めてしっかりと考えていかないといけないことを釧路の自然から教わりました。
▉普通科2年 船島 碧(多賀城中出身)
北海道釧路湖陵高校との交流の中で行われた達古武湖森林再生事業地におけるフィールドワークでは,私は「昆虫班」に加わり,昆虫の調査体験を通じて様々な手法を学びました。自然林や人工林などを回りながら昆虫トラップを回収し,各環境とその昆虫相を比較しました。森の樹林調査では,年輪から樹齢を知るだけでなく,年輪幅などにより樹木が育った過去の環境を知ることができることを学びました。大きな樹木を前に,目には見えない当時の生息環境を知ることができて面白かったことに加え,感動と驚きがありました。3日目に訪れた温根内ビジターセンターでは,“やちまなこ”の深さを測ったり,湿原に生息する野生生物について説明を受けたりする中で,水の大地である釧路湿原の壮大さを感じることができました。自然の素晴らしさを守り育てることの大切さをしっかり学ぶことができたと思います。私にとってこの巡検は,北海道釧路湖陵高校の皆さんとの交流を含め,いろいろな意味でたくさんのことを学ぶことができた素晴らしい体験となりました。
▉災害科学科2年 土井 一樹(玉川中出身)
2日目の巡検では沢班に参加し,湿地に流れ込む沢の下流で水生生物の採集方法を学び,上流では在来種であるニホンザリガニを捕獲した。午後の実習では,達古武湖に生息する水生生物を捕獲し,釧路湿原における種の多様性について学んだ。3日目に訪れた温根内ビジターセンターでは,釧路湿原の気象条件と生態系の関わりについて学んだ。ここでは大自然の中に木道を設置し,観光客や地元の人達に紹介することで,自然の恵みや営みを全国に広めている。午後に訪問した猛禽類医学研究所では,2人の獣医師から猛禽類の怪我やリハビリなど興味深い話を聞き,動物の保護活動や森の再生事業に関わる心意気を感じた。
今回の巡検で発見したことは,我々人間は自然に対して悪影響を与えつつも,多くの人達によって対策が練られ実行されていることだ。都市開発による湿原の減少を補うため,環境省やビジターセンターを中心に保護活動や自然再生事業が行われ,猛禽類医学研究所や野生生物保護センターでは傷ついた動物の治療が行われている。