2015年7月の記事一覧

「浦戸から地球に思いを馳せて」

塩竈市浦戸野々島で野外実習を行いました & 海上保安庁の測量船「天洋」と巡視船「まつしま」」に乗船しました

7月19日(日),20日(月)2日間をかけて,(独)海洋研究開発機構(JAMSTEC)との連携事業「浦戸から地球に思いを馳せて」と題して, 2年生を中心とした生徒23名が塩竈市浦戸諸島野々島での野外実習,多賀城高校での屋内実習を行いました。 JAMSTECとの連携事業は昨年度から引き続きの実施となりました。

地学班の講師は6月9日に行われた事前研修に引き続き小俣珠乃研究員をお招きしました。 プレートテクトニクスの理論と世界に広がる造山帯の話など前回の講習の内容が,実際のフィールドワークで実感できたものになりました。 校内実習では松島湾の成り立ちを,地殻プレートの動きなど地球のダイナミクスを推測できる実習を行っていただきました。

7月19日(日) 野外実習

8:45 マリンゲート塩竈に集合

事前学習で学んだことを出発前に再度確認し,さらに本日の実習内容についての確認です。実習は,地学班と生物班に分かれて行います。

9:30 出航

塩竈市営汽船に乗り,いざ出発。台風の影響もほとんどなく,海の青さと松島の緑がきれいな実習日和となりました。 塩竈市営汽船は浦戸諸島と塩竈港を結び,日曜,祝日には5往復しかありません。 浦戸諸島は,大小様々な島からなり松島湾の南東部に位置する島々です。 桂島,野々島,寒風沢,朴島には集落があり,歴史と豊かな自然に恵まれたところです。
塩竈市営汽船HPはこちら

10:01 野々島着

ここからは,地学班と生物班に分かれての活動です。

地学班は宇内浜付近に移動し,露頭の観察を行いました。i-Padのアプリケーションソフトであるクリノメータを用い断層面の走向傾斜を測定しました。引き続きi-Pad上で地層のスケッチをしました。

最後に浜の砂を椀がけし,有色鉱物を観察しました。

  

生物班は千代崎(毛無﨑)に移動し植生を観察しました。続いて,特に松の観察を行いました。野々島にはアカマツとクロマツが自生しています。 また,そのハイブリッド種も存在しています。そこでこれらの分布について葉を採取することで,植生分布を確かめることとしました。植生分布を調べることで,遷移の様子がわかります。

  

14:23 野々島発

無事に実習を終えて野々島を出港です。島のあちこちではまだ,震災復興のための護岸工事が行われています。 塩竈市街地や松島湾の被害が少なかったのは,浦戸諸島が津波の盾になったからだと言われています。 島民全員が高台に避難して無事だったそうですが,離島ゆえに直後の物資搬入や,その後の復旧・復興も遅れがちになっているとも聞きました。 実習中にも被災跡を目にすることがあり,私たちも何らかのお手伝いができればと考える野外実習でもありました。

14:54 マリンゲート塩竈到着
15:00 海上保安庁測量船,巡視船への乗船見学

当日は「塩竈みなとまつり」も開催され,翌日は「海の日」ということもあり,常日頃御協力をいただいている第二管区海上保安本部,宮城海上保安部のご厚意により 測量船「天洋」と巡視船「まつしま」に乗船させていただく機会を得ることができました。

「天洋」はマルチビーム探査機を備えた測量船で,水路を確保するために沿岸部の海底について調査する船です。 震災後は港湾に沈む車などの発見など水路の安全のために活躍しています。

「まつしま」は災害発生時に孤立した沿岸や離島などで救援活動を中心に行うことができます。 被災者の収容,沿岸物資を積むスペースの確保や一度に200名分の調理ができる能力など最新鋭の装備が施されています。

7月20日(月) 屋内実習

生物班では,前日島内で拾ってきたマツの葉についての観察を行いました。アカマツとクロマツが自然の状態で生育している場合には,アカマツは内陸に,クロマツは海岸に多いと言われています。 また,アカマツは幹の下部が暗褐色,上部は赤褐色をしています。クロマツは下部から上部まで暗褐色をしています。葉では、アカマツはやわらかく,クロマツはかたく暗緑色と言われています。 また,アカマツとクロマツの自然交配種(ハイブリッド)も存在しており,一概に区別することは難しいことが多いと言われています.。

区別を顕微鏡で行うと,樹脂道が表皮についているのがアカマツ,葉肉内に入っているのがクロマツと区別がつくことを利用し,アカマツ,クロマツ,ハイブリッド種を区分する実習をおこないました。

  

地学班では,島内で観察してきた地層やそこで測定してきた走向傾斜から地質図を作成する作業をおこないました。松島湾内では中新世時代前期の松島層と大塚層が地表付近で見られます。 松島層は凝灰岩、大塚層はシルト岩がそれぞれ主体となっており,これらの地層は北西-南東の走向をもち,ゆるやかな背斜,向斜構造をくり返し形成しながら分布しています。 野々島では松島層と大塚層の境界が観察できたことや,大塚層に見られる小断層などについても解説されました。

また,後半には野々島の海岸で砂,さらに椀がけした砂,加えてJAMSTECの調査船が採取した深海堆積物について実体顕微鏡で観察しました。 様々な鉱物の同定について小俣先生から御指導をいただきながら,その違いについての観察をおこない, 様々な鉱物についてi-Padで顕微鏡写真を撮影し,その写真に直接iPAD上で特徴を記載するなどして観察記録を取りました。

  

この事業はパナソニック教育財団の助成対象であり,宮城教育大学のCOC事業の協力を得て行われました。 実習ではノーペーパーでi-Padに保存されたいる地図に直接記録を書き込む,クリノメーターや方位磁石としての測定器具として使う, 写真や動画を撮影する記録媒体として用い,データを共有するなどの取り組みをおこないました。 これまでに無い,校内外での多面的なタブレットの活用としても意義深い実習となりました。

海洋研究開発機構:海洋に関する基盤的研究開発や海洋に関する学術研究に関する業務を総合的に行う研究機関

パナソニック実践研究助成
宮城教育大学COC:「宮城協働モデルによる次世代型教育の開発・普及」

宇宙航空開発機構(JAXA)との連携授業を行いました!

7月14日(火)2年生2クラスを対象としたJAXAとの連携授業を行いました。 地球観測研究センター開発員の大木真人氏と宇宙教育センターの二ノ宮裕美氏を講師としてお迎えし,リモートセンシングの利活用についての学習を行いました。 人工衛星を用いたリモートセンシングとは,様々な衛星画像を処理することによって情報を得る技術です。

最初に,この技術の歴史と原理についての話がありました。 日本上空には多くの衛星が飛んでいることや,衛星によって得られる情報も異なることを学びました。

続いての実習では『EISEI』というソフトを用いて、主にランドサットの画像についての画像処理と解析を行いました。 光の3原色に基づいた3枚の画像を重ねることでカラーの画像を作成しました。 これまで資料集などでしか見たことのなかった衛星画像を自分の手で作成できたことに大きな驚きと喜びがありました。 また,近赤外線の画像を用いることで植生についての考察も行いました。光合成の様子が衛星画像から得られることや, 1989年の画像と比較し,開発による緑地の現象なども確かめられました。 また,震災後海岸線での植生に変化があったことも一目瞭然でした。 熱赤外線の画像からは地表温度の推定を行うことも可能で人間生活の活発な地域とそうでないところなどの考察も行いました。

最後に,このような人工衛星の画像によってどのようなことがわかるのかという紹介がありましたが, あまりにも多くの情報を得られることに驚くとともに,机上のPCでこのような処理が簡単にできることを知り, リモートセンシングの技術を身に付けることで大きな可能性が生まれることを知りました。