防災学習プログラム 平成28年度

熊本地震被災地訪問

 7月28日から8月1日の5日間,災害科学科1年生4名が,熊本地震の被災地を訪問しました。
防災・危機管理ジャーナリストの渡辺 実さんに,甚大な被害を受けた益城町・西原村を中心に案内していただきました。この様子は,9/4(日)15:00よりNHK「東北発☆未来塾」で放送される予定です。

【今も倒壊した家屋が残る益城町】

 住宅の9割以上が被害を受けた益城町では,倒壊した住宅やブルーシートがかけられた屋根があちこちにありました。地表に現れた断層面や2m近く横にずれてしまった道路も見てきました。実際に被災地を歩いて・見て・被災者の話を聞いて,町全体が甚大な被害を受けたことを肌で感じることができました。

【進化する避難所】

 避難所も訪問しました。今なお600人以上が避難生活を送っている益城町総合体育館では,段ボールの柱と布でプライベートスペースを区切っていました。また,日本初のトレーラーハウスを活用した福祉避難所も見せていただきました。トレーラーハウスは,今後,避難所や仮設住宅として活用されることが期待されているのだそうです。
 益城町では,倒壊した住宅の公費解体を進めていますが,解体が全て終わるまでに2年はかかるそうです。被災者した方は,これからどうなるのか,再び益城町に住めるのかなどの不安を抱えていらっしゃいました。

【グリーンコープさんの被災者支援活動】

 物資支給や炊き出しなどの被災者支援活動を行っているグリーンコープさんは,「被災した方々に元気になってほしい」「私たちが一生懸命に取り組む姿から感じてほしい」という思いで支援活動を続けているのだそうです。本校生徒も炊き出しの手伝いをさせていただき,被災者の方とも触れ合うことができました。

【西原村の地域防災力】

 熊本地震を引き起こした「布田川断層」の真上にある西原村では,10年前から発災を想定した防災訓練を重ねてきました。そのことが,今回の避難や安否確認,消防団による救助活動などに役立ったそうです。また,避難所においては,村民が自分の職業や得意分野を生かして主体的に運営を行ったということです。西原村の取組は,地域防災のモデルとして全国から注目を集めています。

 5日間の滞在で,災害科学科の4名は,益城町・西原村における熊本地震による被害の凄まじさを感じました。また,被災者が抱える不安や被災者を支える人たちの思いも受け取りました。復旧・復興にはまだまだ時間がかかります。熊本の現状を,頑張っている方々がいることを忘れず,しっかりと宮城で伝え,広めていくことが熊本の力になると考えます。
 熊本の一日も早い復旧・復興を願っています。

STAND UP SUMMIT 2016

 平成28年8月8日~10日,東京ビッグサイトで開催されたSTAND UP SUMMIT 2016に2年生4名,1年生5名の計9名が参加しました。「STAND UP SUMMIT 2016」は東日本大震災の復興イベントとして2014年に開催されて以来今回が3回目であり,本校は昨年度に続いて2回目の参加となります。今年度は,本校の他に,盛岡第二高校,宮古市立第一中学校,仙台青陵中等教育学校,東北高校,東北福祉大学,小高工業高校,小高商業高校,福島工業高等専門学校,足立区立第六中学校,調布市立第三中学校,阿蘇中央高校,東海大学農学部,さらに台湾やアメリカの学生も加え,合わせて350名を超える多くの学生・生徒が「未来は自分たちが創っていく」という強い意志のもと集い,災害からの復興について考え,発信していくイベントとなりました。

 初日は,パラ・パワーリフティング49kg級の日本記録保持者で,ロンドンパラリンピック日本代表の三浦浩さんの講話とパワーリフティング体験や車椅子体験を行いました。三浦さんからは,怪我をしてからパワーリフティングをするようになった経緯や思いを通して,「できない理由より,できる方法を考える」ことが大事だということを伝えていただきました(※三浦さんは,8月24日にリオデジャネイロ・パラリンピック日本代表に選出されました)。夕方の交流会では,東北の大学生や高校生が同世代である熊本の高校生を東北に招いて実施した「復興や未来を考えるプロジェクト」の報告や,武蔵野大学の学生ボランティアの進行による親睦を図るレクリエーションが行われました。

 2日目は,レセプションホールにて第1部「復興セッション」が行われました。15のセッション(テーマ)に分かれ,社会人,大学生,高校生,中学生がそれぞれのテーマを切り口に復興の未来についてアイディアを出し合い,意見交換をしながら,1枚のポスターにまとめていきました。午後には,各セクションのポスター発表が行われ,互いの考えを共有しました。15のセッションとテーマは以下の通りです。
○三陸鉄道株式会社(鉄道) ○特定非営利活動法人GRA(人材育成) 
○臨海広域防災公園管理センター(防災公園) ○アメリカ大使館(観光)
○福島県庁(風評被害) ○日本赤十字社(国際連携) ○東北福祉大学(防災士)
○早稲田大学(レジリエンス) ○社団法人ふくしまプロジェクト(ペットとの避難)
○東北三紙(メディア) ○NPO法人ボランティアインフォ(ボランティア)
○宮城県タクシー協会(語り部タクシー) ○綾里漁業協同組合(漁業) 
○一般社団法人ワカツク(学生起業) ○コカ・コーライーストジャパン株式会社(自動販売機)

 第2部は国際会議場に会場を移して行われました。「為末大Special talk show」では,男子400mハードルの日本記録保持者であり,現在はスポーツ,社会,教育分野で幅広く活動している為末さんと陸上・短距離(障害者スポーツ)選手の池田樹生さん(中京大学)が,逆境や失敗をどのように克服するのかについて,ご自身の経験を織り交ぜてのトークが繰り広げられました。引き続き,FM東京の公開録音を兼ねた「復興ディスカッション~私たちの未来~」では,為末さんのコーディネートのもと,東北,東京,熊本それぞれの中高生や大学生が震災やその後の復興への思いを語り合いました。この日の締めくくりは,style-3とサンプラズ中野くんのスペシャルコンサートです。バイオリンとウッドベースのユニットであるstyle-3がアップテンポの曲を披露して会場を盛り上げ,サンプラザ中野くんはパッパラー河合さんのギターとともに「TOMOSHIBI?地震がきたら」「タニシのるすばん」「旅人よ」を熱唱し,会場は最高潮に。最後は「Runner」を会場全員で歌い閉幕しました。

最終日は,当初参加学生・生徒によるバーベキューの予定でしたが,高温で炎天下の厳しい状況となったため,急遽,隣接する東京臨海広域防災公園内にある防災体験学習施設「そなエリア東京」を訪問することになりました。防災体験「東京直下72h TOUR」を行ったり,緊急災害現地対策本部が設置されるオペレーションルーム施設を見学したりしました。

 参加した生徒は,この3日間で見て,感じて,学んだことを身近なところから周囲に発信していく決意をもったようです。

参加者の感想
○遠藤 瑠衣さん(2年)
 私は昨年も参加したのですが,昨年とは違った気持ちで話し合いに参加することができました。1日目は,同じ東北から集まった学生の人たちといろいろなプログラムを通して仲良くなれました。2日目は,海外・東京・熊本の学生も参加して15グループに分かれ,復興について話し合いました。私のグループは海外の学生さんが3人いて,通訳を通していろいろな経験や思いを共有し合いました。話し合いの後,1つのポスターを皆でつくって参加者全員の前で発表しました。私はその発表の代表者になり,私以外話す人は外国人であったため打ち合わせを英語でするのは難しかったけれど,通訳さんに手伝っていただきながら準備を進めました。発表直前,私が緊張しているのに気付いたメンバーの1人が「Relax! Relax!」と笑顔で話かけてくれたので,発表は時間内にでき大成功でした。2度目の参加となった今回のSUMMITでしたが,話し合いを重ねるたびにどんどん深く中身の濃いものになってきていると思いました。震災から5年たった今でも復興が進んでいないところもあるし,忘れかけられている事実もあります。この思いや実体験を私たちが未来に伝えていかなければならないと改めて実感した3日間でした。

○五百蔵 匠さん(1年)
 中・高・大の学生と幅広い年代の人が,同じ目線で同じことについて考えられる絶好の機会だと思いこのSUMMITに参加しました。皆の意見が違っていて,そういう考えもあるのかと思うこともありましたし,自分一人で考えたり同学年だけで話し合ったりするよりも視野が広くもって活動することができました。熊本から来てくださった学生さんとも話しをする機会もあり,テレビなどの報道では分からないことも教えてもらうなど貴重な体験となりました。ディスカッションでは,発表に出られませんでしたが,来年参加できることになったら発表させてもらいたいと思います。全体を通して,人との交流も深められて楽しかったし,自分にとってプラスになりました。また参加して,自分の意見をもっと言ったり進んで交流したり,積極的な行動をとっていきたいです。とても充実した3日間でした。

多賀城市大代「防災キャンプ」

 8月5日(金)から1泊2日で,本校の防災関係ボランティアの生徒9名と多賀城東小学校の4~6年生23名が,多賀城市大代地区公民館で行われた「防災キャンプ」に参加しました。
 この「防災キャンプ」では,災害時に一人ひとりが主体的に行動できるようになるために,防災に関する様々な内容について体験を通して学びました。

【消防士による搬送法・胸骨圧迫実習】

【自衛隊員との災害時に使用する救助器具体験】

【本校生による「津波波高標示プレート設置」「防災○×クイズ」】

 本校生が担当した時間では,「津波波高標示プレート設置」「防災○×クイズ」を行いました。「津波波高標示プレート」は本校生徒会が設置活動を行っているもので,公民館内に小学生と一緒に設置しました。また,「防災○×クイズ」では,防災に関するクイズを楽しみながら防災意識も高めることができました。

【アーティストデザイナー佐藤直樹氏とのワークショップ】

 佐藤直樹さんとのワークショップでは,大代地区を守る「ボーサイヒーロー オーシローファイブ」を創作しました。この作品は,大代地区公民館入り口に飾られています。

【生徒感想】
 3327 佐藤 遥
 防災キャンプが始まる前は,初めて会う小学生と一日過ごすので,緊張と不安でいっぱいでした。しかし,様々な活動を通して,子供たちとの距離が縮まっていくのを感じました。互いを名前で呼び合うほど仲良くなり,緊張や不安はいつの間にかなくなっていました。
さて,このキャンプのメインは防災です。災害や事故に遭ったとき,自分の身を自分で守るための対策として,様々なことを体験しました。
 特に印象に残った体験は,消防署の方から教えていただいた搬送法です。3,4人の子供たちが体格の良いラグビー部の高校生を持ち上げて運ぶことができたのです。搬送法を知っていれば,小学生でも簡単かつ安全に大人を運ぶことができることに驚きました。
 他にも,自衛隊の敷地内では,災害時に倒壊した建物から人を救助するための道具を使わせていただきました。実際に東日本大震災でも使われた道具は,どれも普段は触れることのできないものばかりだったので,貴重な機会となりました。
 また,夜は室内にテントを置いて寝ました。眠くなるまで女の子たちで恋の話をしたことも楽しい思い出です。
 この防災キャンプでは,貴重な経験をさせていただきました。全てが新鮮でした。あっという間の24時間でした。参加して本当に良かったです。ありがとうございました。

「災害時の保育」を実施しました

 7月22日,石巻在住の佐々木有香子さんを講師としてお招きし,1年生全体で「くらしと安全A」の授業として「災害時の保育」を実施しました。災害時の保育のあり方について、その体験談を聞くことで自分や子どもの命を大切にし,安全(防災・減災)についての考えを深めさせることを目的としたものです。
 佐々木さんは東日本大震災当時,妹さん宅を訪れたときに津波に遭遇しました。妹さんは7ヶ月のお子さんを子育て中,佐々木さんは臨月を迎えている状況でした。目の前の国道は大渋滞。避難することもままならず,津波に襲われ3階の納戸に逃れた経験をお持ちです。妹さんと協力し7ヶ月の姪を何とか助けようと奮闘したこと,自分が臨月で移動もままならなかったことなどの話がありました。
 佐々木さんは震災7日目に石巻赤十字で男の子を出産しました。震災で亡くなっていく方々のいる病院で,新しい命を世に送り出す奇跡や素晴らしさについてもお話しいただきました。
 生徒からはこの経験から学んだこと,感じたことに,これから自分たちが気をつけていくべきことについて数多くの質問がありました。

  

  

亘理町防災キャンプin逢隈小

 7/2(土)に,亘理町教育委員会生涯学習課が主催する「亘理町防災キャンプin逢隈小」に防災委員の1年生2名・ボランティア同好会の3年生2名が参加してきました。
 亘理町立逢隈小学校3年生から5年生の児童ら,約30名を対象に「地震・津波について学ぶ時間」の講師を担当しました。本校生が,地震・津波の発生の仕組みと危険性,身の守り方について,スライドを使って説明しました。クイズを出したり,身の守り方を一緒に考えたりと工夫して説明することができました。
 説明の最後に「今日,新しく学んだことがある人」と質問したところ,ほとんどの児童が手を上げてくれました。逢隈小の児童はもちろん,初めて小学生に説明をした4人にとっても貴重な学びの時間となりました。

生徒感想
 私は今回の防災キャンプで初めて小学生とワークショップをしました。分かりやすく話せるか,みんなが思いついたことをちゃんと発表してくれるかなど,心配なことがたくさんありました。しかし,実際はみんな楽しそうに考えてくれたので,とても嬉しかったです。何度も練習してよかったなと思いました。子供たちには,今回学んだことを誰かに教えたり,自分の行動に生かしたりしてほしいです。とても良い経験ができました。
 1年 清野寧音

 小学生に地震や津波のことを教えるのは初めてでした。4人で打ち合わせをして,たくさんの意見を出し合ったので,より良いものにできたと思います。小学生に教えるに当たって,自分も地震や津波について知らなかったことを学ぶことができました。この経験を次に生かせるようにしたいです。
 1年 髙田渚生

 今回,小学生に説明するということで,どんな感じになるのかとても楽しみにしていました。練習も楽しくて,この企画に参加できてよかったと感じています。
 また機会があれば,ぜひこのメンバーでもっと良いものをつくってみたいです。
 3年 葛岡莉奈

 初めて小学生を対象に地震や津波のメカニズムを説明しました。はじめは不安がありましたが,防災意識が高い子供たちで反応も良くて,こちらでは考えられなかった意見も出てきたので,とても楽しく説明できました。
 今回,小学生に分かりやすく説明するために自分たちで調べたところもあり,私自身の地震や津波の知識も深まりました。今後もこのような活動を通して,災害の恐ろしさや災害時にどう逃げるのが安全かを伝えるとともに,自分の知識も増やしていきたいです。
 3年 鈴木菜々子